weknowとInterstate
私がweknowを最初に創ろうと思いついた日は、2000年9月8日、初めて米国の地を踏んだコロラド州デンバー国際空港の到着ロビーでのことでした。 英語も全く喋れず25年間ほぼ海外に出たこともない私は、ただ米国のMBA(経営学修士)を取得すれば人生なにか変わるのではないかという想いだけで脱サラし、語学学習からの渡米を決行しました。 空港に着いた瞬間あたりを見回しても日本人が自分一人という初めての経験と、アメリカ人とうまくコミュニケーションできないという不安で一杯になりました。 「空港のインフォメーションに地元に何年も住んでいるような日本人いないかな?」と、ふと思ったのがweknow誕生の最初の小さなきっかけでした。
私は正直中学生の頃から英語が大の苦手でした。 ここからコロラド州デンバーの私立英語学校で半年、サウスカロライナ州コロンビアのサウスカロライナ大学付属英語学校で4か月、英語コミュニケーション力UPとTOEFL(CBT)250点を目指し大嫌いな英語の勉強をすることになります。 数々の人気講師や英語教育の修士号、博士号などを取得されている先生達の授業は、長い英語教育の経験と実績に裏打ちされた素晴らしいものでした。 しかし、合計10か月の英語学校生活の中で私が必要としたものを効率よく身につけられたかと言えばとてもそうとは言えませんでした。 世界各国から集まった生徒達は私と同じく大学や大学院を目指すもの、職場での英会話コミュニケーションが早急に必要なもの、旦那様の米国転勤などによって生活する上で英会話が必要になってしまった主婦など、人種も目的も様々でした。
優秀な講師陣とは言え一対多数の教室のなかで目的が違う全ての生徒に満足なサービスを提供することなど不可能です。 また私はある先生に唐突に「英語以外で何か喋れますか?」と聞いたところ、「ほぼ米国から出たことないので英語だけ」との答えが返ってきました。 今思えばあたりまえなのですが、どんな素晴らしい語学教師でも、一国に留まっている人間、もしくは他国の言語を知ろうとしない人間には、相手が何故自国の言葉を話すのに苦労するのかが感覚としてまるで理解できないのです。 また、「長年母国語のみで生活してきた私達が相手の母国語を話すとき何故苦労するのか? それが分かるのは同じ国境と言葉の壁を越えてきた者でしかない」ということを私は確信しています。
私はこの後アメリカの大学、大学院へと進み、日本で数年生活してきた米国人達と出会い、このことが実証されることになります。 彼らはアメリカ本土であるにもかかわらずやたら日本語で私に話しかけてきました。 未完成な日本語でしたが、彼らの一生懸命「伝えよう」という気合で意味は十分に伝わりました。 私が日本語で英語の表現について説明を求めると、彼らは「教える」という態度ではなく、アメリカ人と日本人の感覚の違いを日本語で説明し、英語の様々な表現を私に「知らせて」くれました。 下手でも日本語で一生懸命伝えようとする彼らの説明は、どんな著名な英語しか喋れない先生の説明よりもわかりやすかったし、何より私も彼らのことを、彼らの英語をもっと「知ろう」、下手な英語でも彼らの日本語のように一生懸命喋ろうと自然に思えました。 weknowの形が見えてきました。
私はコミュニケーションにおいて先生が生徒に教えるという典型的な学校スタイルが好きではありません。 私の持論ですがコミュニケーションや情報を身につけるのに先生、生徒の関係は全く必要ないと思っております。 むしろ邪魔なくらいだと思っています。 時に知っている「先生」は、知らない「生徒」にその立場を利用して高いテキストを買わせ、先生がやりやすい、先生がやりたいレッスンなどをすることが可能です。そんなものは確固たる目的をもったお客様には迷惑以外何物でもありません。 あくまでお客様が「知りたい」ことを、お客様がやりたい方法で効率的に「知る」ことができる。 そしてそこにはお客様の知りたいことを、お客様の母国語で理解出来る者がいる。 そんな場所を私は創りたいと考えました。
私は2000年9月8日にデンバー国際空港で感じた不安を今でも昨日のことのように憶えています。 その不安はその国で話されている言語や情報を「知らない」ことからくるものでした。 この「知らない」という不安は、日本人である私特有のものではなく、初めて海外へ出る、または母国語以外の言語でコミュニケーションしなければならない世界中全ての人々がもつ「知らない」不安であると確信しております。 今現在世界中で起きている紛争や問題の発端も相手を「知らない」ことに起因しているはずです。 少しでもお互いの何かを知っていれば、コミュニケーションとともに私達の距離もぐっと近くなるはずです。
weknowはお互いを「知ろう」というメッセージを込め、株式会社Interstateはお互いを「知る」ための架け橋の象徴として名づけました。 Interstateはアメリカの州間高速道路の呼称です。 実際のInterstateが州と州を繋ぐ架け橋であるよう、私達は皆様が国境を超えるための架け橋であらんことを思ってやみません。 「世界中の人々の心の中にある国境を無くすこと」 私達のミッションです。
2011年8月20日
池田真明